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福岡地方裁判所小倉支部 昭和57年(ワ)467号 判決

原告

神前一郎

右訴訟代理人弁護士

三代英昭

被告

株式会社三龍商会

右代表者代表取締役

原口朝光

被告

三龍機工株式会社

右代表者代表取締役

原口朝光

右被告ら訴訟代理人弁護士

安永澤太

安永宏

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、各金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五七年四月二九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  本件意匠権

原告は、次の(一)ないし(三)記載の各意匠権(以下、「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。

(一) 意匠に係る物品 かわら

出願日 昭和四〇年一一月一五日

登録日 昭和四六年三月三一日

登録番号 第三二九九六二号

登録意匠 別紙(一)意匠公報記載のとおり

(以下、「A意匠」という)

(二) 意匠に係る物品 かわら

出願日 昭和四〇年一一月一五日

登録日 昭和四六年三月三一日

登録番号 第三二九九六三号

登録意匠 別紙(二)意匠公報記載のとおり

(以下、「B意匠」という)

(三) 意匠に係る物品 かわら

出願日 昭和四〇年一一月一五日

登録日 昭和四六年三月三一日

登録番号 第三二九九六四号

登録意匠 別紙(三)意匠公報記載のとおり

(以下、「C意匠」という)

2  本件登録意匠の構成は次のとおりである。

(一) A意匠

(1) 基本構成

日本工業規格(JIS)の定める平S形の軒かわらの底面左側の隣接かわらとの継目部分に変形六角形の小巴を取り付けたことを基本構成とする。

(2) 基礎的形状

(イ) 中央部やや右寄りの部分(横幅の約一〇分の六)を占める平坦部(本体部ともいう)と、

(ロ) 平坦部の左端が約三五度の角度で斜左上方へ断面が富士形になるよう折曲され、その上端の隅角が約三〇度に切り欠かれている桟部と、

(ハ) 平坦部の右端が約三〇度の角度で斜右上方へ折曲された隆起部(跳ね上り部ともいう)とからなり、

(ニ) 幅・縦・厚さの比が約一対一対0.038であるところの

(ホ) 折曲された方形板状体である。

(3) 模様

基礎的形状には、正面側、背面側とも、平坦部の上縁近くに土手のない二個の釘穴がある他には、狭義の模様も立体模様もない。

(4) 軒かわらとしての付加的形状

(イ) 垂れ

平坦部及び隆起部の下縁に背面がわへ垂下する垂れがある。垂れの厚さは板厚と等しく、幅は平坦部に平行して板厚の約2.5倍である。

(ロ) 小巴

桟部の下縁に板厚だけ垂れよりも突出した小巴が設けられている。小巴の形は、上部を富士形、下部を矩形形とした変形六角形である。

(二) B意匠

(1) 基本構成

平S形の左袖かわらの左側面下部の隣接かわらとの継目部分に、変形六角形の覆板(ソケット)を取り付けたことを基本構成とする。

(2) 基礎的形状

屋根の左端に葺かれる左袖かわらとしての機能上桟部に左側に葺かれるかわらを覆う厂(がんだれ)形部がない点を除いてはA意匠と略同一である。

(3) 模様

A意匠と同様である。

(4) 左袖かわらとしての付加的形状

(イ) 袖部

桟部の左縁に袖部が背面側に垂下し、袖部の厚さは板厚と等しく、上端から縦幅の約五分の四に至るまで、上端から底面方向へ下るにしたがつて次第に幅広くなつている縦長台形状をなしている。

(ロ) 覆板(ソケット又は継目冠蓋)

(a) 桟部の下方にあつて袖部の下端に袖部の板厚だけ外方へ突出した覆板が設けられている。

(b) 覆板の形は、

(ⅰ)袖に接する辺とそれに相対する袖に接しない辺及び瓦の側面に接する辺とそれに相対する瓦の側面に接しない辺からなる矩形形において、

(ⅱ)袖に接しない辺の瓦の側面に接しない部分約五分の四の点と瓦の側面に接しない辺の袖に接しない部分約一二分の七の点とを、

(ⅲ)先端が少し鍵形に折曲した斜辺で結び、その外方を切り欠いた形である。

(三) C意匠

(1) 基本構成

平S形の右袖かわらの右側面下部の隣接かわらとの継目部分に変形六角形の覆板(ソケット)を取り付けたことを基本構成とする。

(2) 基礎的形状

A意匠と略同一である。

(3) 模様

A意匠と同様である。

(4) 右袖かわらとしての付加的形状

(イ) 袖部

(a) 隆起部の右縁に背面側に垂下する袖部がある。

(b) 袖部の厚さは板厚と等しく、上端から縦幅の約五分の四に至るまで、上端から底面方向へ下るにしたがつて次第に幅広くなつている縦長台形状をなしている。

(ロ) 覆板(ソケット又は継目冠蓋)

(a) 隆起部の下方にあつて袖部の下端に袖部の板厚だけ外方へ突出した覆板が設けられている。

(b) 覆板の形

B意匠と左右対照にて同一である。

3  本件登録意匠の要部

(一) A意匠

A意匠の要部は、平S形軒かわらに富士形と矩形形を組み合せて整形された変形六角形の小巴を取り付けた点にある。すなわち、小巴を付けた軒かわらは、A意匠の出願前から存在したが、A意匠は、この技術的思想を利用し、従来小巴を付加しないで製造されていた平S形軒かわらにこれを取り付けることにより、新しい形状の軒かわらを創作し、屋根かわらの葺上時の外観美を増加しようとした点に新規性、創作性を有するものである。

A意匠は、表面に模様のない、すなわち模様を限定しない形状だけの意匠であつて、模様のないことは要部ではない。

(二) B意匠及びC意匠

B意匠の要部は、平S形左袖かわらに、C意匠の要部は平S形右袖かわらに、いずれも整形された変形六角形の覆板を取り付けた点にある。すなわち、覆板を付けた袖かわらはB意匠及びC意匠の出願前から存在するが、両意匠は、この技術的思想を利用し、従来覆板を付けないで製造されていた平S形袖かわらにこれを取り付けることにより新しい形状の意匠を創作し、屋根かわらの葺上時の外観美を増加しようとした点に新規性、創作性を有するものである。

B意匠及びC意匠は、いずれも表面に模様のない、すなわち模様を限定しない形状だけの意匠であつて、模様のないことは要部ではない。

4  被告らの製造・販売行為

被告三龍商会は、昭和四五年ごろから別紙(四)記載の軒かわら(以下「イ号物件」という)、別紙(五)記載の左袖かわら(以下「ロ号物件」という)及び別紙(六)記載の右袖かわら(以下「ハ号物件」といい、イないしハ号物件を総称して被告製品ともいう。)を製造して販売し、被告三龍機工は、右各かわらを製造するための型枠を製造して販売している。

5  被告製品の意匠の構成

被告製品の意匠の構成は、以下のとおりである。

(一) イ号物件(軒かわら)

(1) イ号物件の意匠(以下「イ号意匠」という)は、次の点を除きA意匠と同一である。

(イ) 平坦部正面側に三本の縦筋状隆起線とその上端で接続する横筋状隆起線をもつて模様が付加されている。

(ロ) 平坦部の背面側に四個の矩形模様及び左右に台形上の突起が形成されている。

(ハ) 小巴の変形六角形の形状は、上部富士形の頂上部が少し左寄りとなつている。

(2) イ号物件の意匠は、昭和五三年七月二一日登録番号第四八六七四八号をもつて意匠登録がなされている。

(二) ロ号物件(左袖かわら)

ロ号物件の意匠(以下「ロ号意匠」という)は、次の点を除きB意匠と同一である。

(1) 平坦部の正面側に三本の縦筋状隆起線とその上端で接続する横筋状隆起線をもつて模様が付加されている。

(2) 平坦部背面側に四個の矩形模様が付加されている。

(三) ハ号物件(右袖かわら)

ハ号物件の意匠(以下「ハ号意匠」という)は、右(1)、(2)の点を除きC意匠と同一である。

6  本件登録意匠と被告製品の意匠との対比

(一) 類似関係

被告製品の意匠は、本件登録意匠と類似する意匠である。

(1) A意匠とイ号意匠

(イ) A意匠とイ号意匠は、いずれも平S形軒かわらに変形六角形の小巴を取り付けた点でその構成が一致しているが、他面イ号意匠には表面と裏面に模様が、裏面に水平突起が存する点で表面裏面とも無模様のA意匠とその構成を異にする。

(ロ) A意匠とイ号意匠とは、右のとおりの相違点が存するけれども、A意匠の要部は、無模様の点ではなく平S形軒かわらに小巴を取り付けた点にあるから、この点で類似する限りイ号意匠はA意匠と類似するものといわざるをえない。

(2) B意匠とロ号意匠

(イ) B意匠とロ号意匠は、いずれも平S形左袖かわらに変形六角形の覆板を取り付けた点でその構成が一致しているが、他面ロ号意匠には表面及び裏面に模様が存する点で表面裏面とも無模様のB意匠とその構成を異にする。

(ロ) B意匠とロ号意匠とは、右のとおりの相違点が存するけれども、B意匠の要部は、無模様の点ではなく平S形左袖かわらに覆板を取り付けたことにあるから、この点で類似する限りロ号意匠はB意匠と類似するものといわざるをえない。

(3) C意匠とハ号意匠

(イ) C意匠とハ号意匠は、いずれも平S形右袖かわらに変形六角形の覆板を取り付けた点でその構成が一致しているが、他面ハ号意匠には表面及び裏面に模様が存する点で表面裏面とも無模様のC意匠とその構成を異にする。

(ロ) C意匠とハ号意匠は、右のとおりの相違点が存するけれども、C意匠の要部は平S形右袖かわらに覆板を取り付けたことにあるから、この点で類似する限り、ハ号意匠はC意匠と類似する。

(二) 利用関係

仮に右(一)の類似関係の主張が認められないとしても、本件登録意匠と被告製品の意匠とは利用関係にある。

(1) 意匠の利用とは、ある意匠(後願意匠)がその構成要素中に他の登録意匠(先願意匠)またはこれに類似する意匠の全部をその特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別する態様において包含し、この部分と他の構成要素との結合により全体としては他の登録意匠(先願意匠)とは非類似の一個の意匠をなしているが、この後願意匠を実施すると必然的に他の登録意匠(先願意匠)を実施する関係にある場合をいう。

そして、形状だけの意匠は、余白の部分については模様や色彩の限定がないものであるから、先願意匠が形状だけの意匠であり、後願意匠が形状と模様の意匠でその形状が先願の形状と同一または類似する場合には、後願意匠は、その中に先願意匠をそつくり持つていることになり、先願意匠との間に利用関係が成立する。

(2) イ号意匠は、前記のとおり、昭和五三年七月二一日登録番号四八六七四八号をもつて意匠登録されたが、先願の形状だけの意匠であるA意匠と同一または類似の形状の余白部分に模様を付加したものにすぎなく、しかもA意匠の全部がその特徴を破壊することなく、他の部分と区別しうる態様において存在するものであるから、A意匠を利用するものである。

(3) 後発意匠であるロ号意匠は形状だけの先願の登録意匠であるB意匠に、後発意匠であるハ号意匠は形状だけの先願の登録意匠であるC意匠に、いずれも模様を付加したものにすぎなく、しかも先願の登録意匠の全部がその特徴を破壊することなく、他の部分と区別しうる態様において存在するものであるから、ロ号意匠はB意匠を、ハ号意匠はC意匠を利用するものである。

(4) したがつて、被告らは、意匠法第二六条により、イ、ロ、ハ意匠若しくはこれに類似する意匠を業として実施することはできない。

7  損失

(一) 被告三龍商会は、別紙(三)の「販売利益表」記載のとおり昭和四六年から昭和五七年までの間に本件登録意匠と類似した意匠に係る被告製品を製造、販売して少なくとも合計一二二一万六四三七円の利益を得た。その結果、原告は同額の損失を被つた。

(二) 被告三龍機工は、昭和四六年から昭和五七年までの間に被告製品を製造する金型を製造、販売して少なくとも一〇〇〇万円を下らない利益を得た。その結果原告は同額の損失を被つた。

8  よつて、原告は被告らに対し、不当利得として各内金一〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五七年四月二九日から各完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の事実は、いずれも認める。

2  同3の事実は否認する。

3  同4及び5の事実は、いずれも認める。

4  同6の(一)、(二)の事実及び主張は、いずれも争う。

5  同7のうち、被告三龍商会が被告製品を、被告三龍機工が被告製品を製造する金型を製造・販売していることは認めるが、その余の事実は否認する。

三  被告の主張

1  本件登録意匠の要部

(一) 軒かわらの小巴や袖かわらの覆板(継目冠蓋)は、かわらの機能上必然的な形状で公知のものであり、これをかわらに取り付けたことをもつて本件登録意匠の要部ということはできない。すなわち、

(1) 軒かわらは、屋根の軒先に葺かれるものであるため垂れがある。そして、隣接する左側のかわらの上に重なる桟部が延長された形で垂れの部分に突出する覆板は、桟が丸味を帯びていたので丸い形をしており業界用語で万十と呼ばれていたが、古来その表面に巴紋その他の家紋を入れることが多かつたので、小巴と呼ばれていた。

明治以後、セメント瓦やスレート瓦が発明されて、それらの桟部が角を持つようになると、覆板も角を持つようになり、地方、地方で盛んにいろいろな形の覆板が作られるようになつた。別府市立南小学校の給食室の屋根の厚形スレート、徳島県の松下瓦などはいずれもその例である。特に、九州では、戦後、A意匠の出願前に大分市内の理想瓦株式会社で製造された「理想瓦」の小巴は、A意匠に類似した「将棋の駒形」をしていた。

以上のように、軒かわらに垂れと小巴を付けることは公知のことで、新規性も創作性もなく、あるいは創作容易なことであり、これらを取り付けた点をもつてA意匠の要部とはいえない。

(2) 袖かわらに覆板を取り付けることは、別紙(七)の「実用新案公報」記載のとおり、昭和一一年に坂本格次郎が「継目冠蓋」と称して実用新案の出願をなし、同年一一月一五日出願公告(第一五一五四号)がなされて以来公知となつた形状であり、袖かわらに覆板を取り付けるB意匠及びC意匠の構成は公知公用のありふれたもので、新規性も創作性もない。

(二) むしろ、本件登録意匠の要部は、いずれも平S形かわらの平坦部に模様がないことにある。

厚形スレートのうちかわら中央部の谷になつた部分が湾曲する形状の和形、S形は、桟両端のうねりによつて雨滴飛抹の拡散が防止され、雨水は凹んだ中央部に集まつて流れるので水切れが良く、流水案内のため隆起した縦筋模様を付ける必要がない。しかし、かわら中央部が平坦な形状の平形や平S形は、雨滴飛抹の拡散を防止し、水切れを良くするために隆起した縦筋模様(溝)を付ける必要がある。このため、和形、S形のかわらについて意匠登録された例がほとんどないのに比べ、平形、平S形のかわらについては別紙(八)の「意匠登録一覧表」記載のとおり表面の模様に考案が集約されて多くの登録意匠が存在し、原告出願以前に無模様のかわらが登録された例はない。したがつて、本件登録意匠は、無模様性が評価されて登録されたものと考えられるから、この点が本件登録意匠の要部である。

このことは、A意匠が登録された後も、別紙(四)の「意匠公報」記載のとおり平S形軒かわらに小巴を取り付けたイ号意匠が新たに意匠登録されていること、袖かわらに覆板(継目冠蓋)を付けたロ号意匠及びハ号意匠の意匠登録の出願を、特許庁は、原告の出願ではなく、覆板(継目冠蓋)の付かない田口利文の先願を引用して拒絶したことからも明らかである。

(三) 仮に、本件登録意匠の要部が小巴又は覆板を取り付けた点にあるとしても、原告は、出願前に本件登録意匠の新規性を喪失させた。すなわち、原告は、本件登録意匠の登録出願前の昭和四〇年一〇月下旬那覇市で開催された「第八回沖縄観光物産展」に覆板付きの「改良S型スレート瓦」の金型を展示、販売し、またこれに先立つて宣伝用パンフレットを頒布し、本件各意匠の新規性を喪失させた。

そして、原告は、本件各意匠の登録出願にあたり意匠法四条二項の規定に基づき新規性喪失の例外規定の適用を受けたい旨の手続を行わず、出願前に自ら公知化させたことを秘匿して本件各意匠登録をなした。このような手続無視の出願は、重大な違法性を有するから、本件登録意匠は、無効と断ぜざるを得ない。

2  類似関係

本件登録意匠の要部は無模様の点にあり、被告製品の意匠の要部は前記模様にあるから、各両意匠は類似しない。

3  利用関係

(1) 形状、模様、色彩の結合意匠は、図面に示された特定の模様つき、色つきの意匠という意味であり、形状、模様、色彩を分離して考えるべきではない。形状だけの意匠とは、形状を表わす線に囲まれた図面上の空間が模様、色彩について無限定の意匠であることを意味するものではなく、無模様かつ一色の形状の意匠を意味する。したがつて、無模様かつ一色の形状の意匠と有模様の形状の意匠または有模様、色つきの形状の意匠とは類似の範囲を超える限り別の意匠であり、この場合後願たる形状及び模様の結合意匠を実施しても先願たる形状だけの意匠を実施したことにはならない。

(2) 第一工程で先願意匠とそつくりの形状を作り、第二工程で模様を入れるような物品を製造する場合には、第一工程中に先願意匠がそつくり包含されることになるから利用関係が成立するが、工程を分けずに一工程の一発成形で模様入りの物品を製造する場合には、その工程に無模様という先願意匠を包含することがないので利用関係は成立しない。

(3) 以上の次第であるから、被告製品の意匠は本件登録意匠を利用するものではない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一本件意匠権

請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二本件登録意匠の構成

請求原因2の事実は、当事者間に争いがない。

三本件登録意匠の要部

1  A意匠の要部

〈証拠〉によれば、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  厚形スレートは、セメント、砂、石綿を主材料として製造されるかわらで、大正初期から製造され始め、昭和二五年二月工業標準化法に基づきJISA5402としてJIS表示品目の指定がなされた。当初の形状は、流水面の平坦な平形が主体であつたが、雨仕舞に難点があつたので、重ね部分(隆起部)を高くして流水面を大きくしたS形、和形が普及し、昭和三二年S形が、昭和三五年和形、洋形が日本工業規格に指定され、桟がわらの形状及び寸法が定められた。昭和五六年従来のS形は、平S形と改称され、新たにスペイン形をS形として規格対象とした。

(二)  軒かわらには古来より円形の覆板が取り付けられ、その表面には巴紋などの家紋を彫り込むことから「小巴」と呼ばれ、また、業界ではその形から「万十」と呼ばれていたが、厚形スレートかわらの普及とともに桟部が角形になつたことに伴い、小巴も角形となり、別紙(九)の「小巴比較図」記載のような角形の小巴を付した軒かわらが各地で製造された。

(1) 昭和一二年ごろ大分市において製造されていた平形の軒かわらには、同図の(ロ)記載のような一隅欠いた四角形の小巴が設けられている。

(2) 昭和二六年二月二五日ごろ建築された別府市立南小学校給食室の屋根に葺かれた平形軒かわらには、同図の(ハ)記載のとおり薄い半円筒形の小巴が設けられている。

(3) 昭和二〇年代から大分市において大分理想瓦株式会社により「理想瓦」の名称で製造されていた和形の軒かわらには、同図の(二)記載のとおり「将棋の駒形」の小巴が設けられている。

(4) 昭和三九年一〇月より徳島県阿南市において瓦製造業者の松下郁二が製造しているS形(現平S形)軒かわらには、同図の(ホ)記載のとおり亀甲状の六角形の小巴が設けられている。

(三)  表面中央部が平坦な平形や平S形かわらは、中央部が湾曲した和形や洋形のかわらに比べると雨水が飛散しやすく水はけが悪いので、雨滴の飛散を防止して流水効果を高めるとともに、かわらの強度を増すため表面に隆起した縦筋状の模様が、裏面に横長の凹部が設けられている。

平S形かわらには、既にA意匠の出願前より別紙(八)「意匠登録一覧表」記載のとおり、多数の登録意匠が存するが、いずれも意匠の構成として、表面中央部に流水案内作用をもつ模様が存し、それら各意匠は、模様の差異がそれぞれ異なつた美感を与えるものとして登録されたものであつて、無模様の登録意匠はA意匠以外に存しない。(原告は、昭和三八年三月六日安達喜作出願にかかる、昭和四六年一一月四日登録、登録番号第三四〇九九九号の意匠(別紙(八)の「意匠登録一覧表」のNo.16)は、本件登録意匠の出願前に登録された無模様の平S形かわらである旨主張するが、右意匠は表面上部に横筋状の、裏面に縦三本、横二本の各模様があるものであるから、原告の主張は理由がない。)。

そして、昭和三五年度日本工業規格厚型スレートJISA5402の付図1に記載された平形かわらの標準図及び付図2に記載されたS形(現平S形)かわらの標準図には、いずれも右同様の模様が設けられている。

(四)  イ号意匠は、後記のとおりの構成であり、A意匠と小巴をもつ点で類似し、前記(三)と同様の模様をもつ点で異なるが、別紙(四)の意匠公報記載のとおり、A意匠登録後である昭和五一年四月一九日出願され、昭和五三年七月二一日意匠登録された。

以上認定した事実によると、軒かわらに小巴を取り付けることは、A意匠の出願前より各形状のかわらにおいて一般的に行われており、公知といえるから、平S形軒かわらに小巴を取り付けることは極めてありふれた構成と考えられ、これをもつてA意匠に新規性や創作性があるとはいえない。

これに対し、平S形かわらは、表面裏面に模様を付けたものが広く知られているところ、A意匠は表面裏面とも釘孔以外の模様も立体模様もない点で公知意匠には見られない斬新な特徴が存するものといえるから、被告主張のようにこの点をA意匠の要部とみるべきである。したがつて、原告の主張は、理由がない。

2  B意匠及びC意匠

(一)  原告は、B意匠の要部は平S形左袖かわらに覆板を取り付けた点に、C意匠の要部は平S形右袖かわらに覆板を取り付けた点にあると主張し、他方被告は、原告が要部として主張する点は両意匠の出願時において公知であつて、むしろかわらの平坦部に模様がないことが両意匠の要部であると主張するので、この点につき検討する。

(二)  〈証拠〉によれば、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 坂本格次郎は、昭和一一年六月一八日袖かわらの葺合せの継目を風雨から保護するため袖部前端に袖部の厚さだけ外方へ突出した継目冠蓋と称する覆板を考案し、日本国内において頒布された刊行物である実用新案公報(実用新案出願公告昭和一一年―第一五一五四号)に記載された。

右継目冠蓋の意匠の構成は、別紙(七)の「実用新案公報」記載のとおり袖に接する辺とそれに相対する袖に接しない辺及びかわらの側面に接する辺とそれに相対するかわらの側面に接しない辺とからなる矩形形であり、袖に接しない辺のかわらの側面に接しない部分約四分の三の点とかわらの側面に接しない辺の袖に接しない部分約一二分の五の点とをマイナスの弧状の辺で結んでその外方を切り欠いた形である。

(2) 昭和一二年ごろ大分市において製造されていた平形の左袖かわらには、別紙(一〇)の「左袖がわら覆板比較図」の(ロ)に、右袖かわらには別紙(一一)の「右袖かわら覆板比較図」の(ロ)に各記載のような袖部の前端にかわらの板厚だけ外方に突出し、ほぼ正方形をした覆板が設けられていた。

(3) 昭和二六年二月二五日ごろ建設された別府市立南小学校給食室の屋根に葺かれた平形の左袖かわらには別紙(一〇)の「左袖かわら覆板比較図」の(ハ)に、右袖かわらには別紙(一一)の「右袖かわら覆板比較図」の(ハ)に、各記載のとおり、薄い半円筒形の覆板が設けられている。

(4) 表面中央部が平坦な平形及び平S形袖かわらは、前記二1(三)と同様に、雨水の流水効果を高め、かわらの強度を増すために、表面に隆起した縦筋状の模様が、裏面に横長の凹部が設けられているものが広く知られている。

以上認定した事実によると、袖かわらに覆板を取り付けることは、袖かわらの用途、機能に伴なう必然的な形状であつて、B意匠及びC意匠の出願前より各形状の袖かわらにおいて公知であるから、平S形袖かわらに覆板を取り付けたことは極めてありふれた構成と考えられ、これをもつてB意匠及びC意匠に新規性、創作性があるとはいえない。

これに対し、平S形袖かわらの表面裏面には模様を付けたものが広く知られているところ、B意匠及びC意匠は表面裏面とも釘孔以外の模様も立体模様もない点で従来の意匠には見られない斬新な特徴が存するものと認められるから、被告主張のようにこの点をB意匠及びC意匠の要部とみるべきである。

したがつて、原告の主張は理由がない。

四被告製品の意匠の構成

当事者間に争いがない請求原因5の事実に〈証拠〉を総合すれば、被告製品の意匠の構成は次のとおりであると認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

1  イ号意匠

(一)  基礎的形状

(1) 平坦部

横幅全体の約六割を占め、中央より右寄りに位置し表裏面に後記模様が形成され、表面上端に二個の釘孔がある。

(2) 桟部

横幅全体の約三割を占め、平坦部に接続してその左端から約三〇度の角度で斜上方へ折れ曲つて傾斜し、平坦部の約三分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続し板厚の約二倍の幅をもつ水平面とその水平面の左端から約二五度の角度で下降し、その外縁が後記隆起部の水平面より上方に位置する小斜面とを配している。

上端隅角部には約六五度の角度で斜めに切除された切欠部がある。

(3) 隆起部(跳ね上り部)

横幅全体の約一割を占め、平坦部に接続してその右端から約四〇度の角度で斜上方へ折れ曲つて傾斜し、板厚の約二倍弱の幅をもつ斜面とその斜面に連続し板厚とほぼ等しい幅をもつ水平面とを配している。

(二)  付加的形状

(1) 垂れ

桟部、平坦部及び隆起部の下端から裏面側へ板厚とほぼ同じ厚さでかつ板厚の約2.5倍の幅をもつ垂れが垂下する。

(2) 小巴(万十)

桟部の下端に隣接かわらの重合部の前部を覆い得るように垂れより板厚分だけ突出し、両隅角が約四五度の角度で大小異なる大きさに面取された前覆部(小巴)が形成されている。小巴の断面の形状は、上部が平坦部側へ長く裾野をひく富士形、下部が矩形形の変形六角形である。

(三)  模様

平坦部表面側には平坦部を四等分する三本の縦筋条の隆起線とその各隆起線の上端に接続する一本の横筋条の隆起線とがあり、それら隆起線を相対的に浮き上がらせるため平坦部全体並びに桟部及び隆起部に連続する上端部を凹陥状に窪ませている。

裏面には平坦部に四個の縦長矩形が浅く刻設され、平坦部上端に細長い引掛桟が隆起し、桟部及び隆起部の背面に各一個の水平突起が設けられている。

2  ロ号意匠

(一)  基礎的形状

(1) 平坦部

横幅全体の約八割五分を占め、ほぼ中央に位置しており、表裏面に後記の模様が形成され、表面上端に二個の釘孔がある。

(2) 桟部

横幅全体の約一割を占め、平坦部に接続してその左端から約三五度の角度で上方へ傾斜し、平坦部の約6.5分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続し板厚とほぼ等しい幅をもつ水平面とを配している。

(3) 隆起部

横幅全体の約五分を占め、平坦部に接続してその右端から約三五度の角度で上方へ傾斜し、平坦部の約7.4分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続して板厚に満たない幅でかつその右端が垂直状を呈する水平面を配している。右斜面及び水平面を含めて前端部に右端に対し約三〇度の切欠きがある。

(3) 隆起部

横幅全体の約五分を占め、平坦部に接続してその右端から約三五度の角度で上方へ傾斜し、平坦部の約7.4分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続して板厚に満たない幅でかつその右端が垂直状を呈する水平面を配している。右斜面及び水平面を含めて前端部に右端に対し約三〇度の切欠きがある。

(二)  付加的形成

(1) 袖部(袖垂れ)

板厚に等しい幅と板厚の約五倍の高さをもち桟部の左端に垂直に位置する垂壁が形成されている。側方からみると前端から後端に進むにつれて幅が狭くなつていく縦長台形状を呈している。

(2) 覆板

桟部の下方にあつて袖部の前端に袖部より板厚分だけ突出した覆形が形成されている。この覆板は、前端に板厚とほぼ等しい方形部分を残して桟部の左端に対して約五五度の角度で斜め後下方に切除され、その後端が約四五度の角度をなす斜面で袖部につながつている。

(三)  模様

表面側には平坦部を四等分する三本の縦筋条の隆起線とその各隆起線の上端に接する一本の横筋条の隆起線とがあり、それら隆起線を相対的に浮き上らせるため平坦部の表面並びに桟部及び隆起部に連続する上端部を凹陥状に窪ませている。

裏面側には平坦部に四個の縦長矩形が浅く刻設され、平坦部上端に細長い引掛桟が隆起し、下方に横幅全体にわたつて浅く刻設された凹溝が存する。

3  ハ号意匠

(一)  基礎的形状

(1) 平坦部

横幅全体の約六割を占め、中央より右寄りに位置し、表裏面に後記の模様が形成され、表面上端に二個の釘孔がある。

(2) 桟部

横幅全体の約三割を占め、平坦部に接続してその左端から約三〇度の角度で上方に傾斜し、平坦部の約四分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続し板厚の約二倍の幅をもつ水平面とその水平面から約三〇度の角度で下降しその外縁が垂直状を呈し、かつ下端が平坦部より上方に位置する平坦部の約七分の一の幅をもつ小斜面とを配し、右水平面と小斜面を含む後端部に左側縁に対し約三〇度の角度の切欠きを有する。

(3) 隆起部

横幅全体の約一割を占め、平坦部に接続してその右端から約四〇度の角度で上方に傾斜し、平坦部の約八分の一の幅をもつ斜面とその斜面に連続し板厚の約二倍の幅をもつ水平面とを配している。

(二)  付加的形状

(1) 袖部(袖垂れ)

板厚に等しい幅と板厚の約五倍の高さをもち隆起部の右端に垂直に位置する垂壁が形成されている。

側方からみると前端から後端に進むにつれて幅が狭くなつていく縦長台形状を呈している。

(2) 覆板

隆起部の下方にあつて袖部の前端に袖部より板厚分だけ突出した覆板が形成されている。

この覆板は、前端に板厚とほぼ等しい方形部分を残して前記水平面に対し約五〇度の角度で斜め後下方へ切除され、その後端が約四〇度の角度をなす斜面で袖部につながつている。

(三)  模様

四2(三)と同じ

五そこで、以上の事実に基づいて本件登録意匠と被告製品の意匠とを対比する。

1  A意匠とイ号意匠との対比

(一)  両意匠は、平坦部、桟部及隆起部により形成されている点、平坦部及び隆起部の下端に垂れがある点、桟部の下端に上部が富士形、下部が矩形形よりなる変形六角形(偏台形状)の小巴がある点すなわち、基礎的形状及び付加的形状の各構成において共通しているが、次の点において顕著に相違している。

すなわち、A意匠では平坦部の表面裏面とも二個の釘孔のほかに模様がない(この点がA意匠の要部である。)のに対し、イ号意匠では平坦部表面に三本の縦筋条の隆起線と一本の横筋条の隆起線とがあり、裏面に四個の浅く刻設された矩形、隆起した引掛桟と二個の水平突起とがあつて、表面裏面ともそれらが顕著な模様性をなしている(この点がイ号意匠の要部である。)。

(二)  しかして、右共通点はA意匠の要部に関しない部分であるのに対し、右相違点は、両意匠の最も顕著な差異であつて、全体として生じる美感を異にし、看者に別異の印象を与えるものといわなければならないから、A意匠とイ号意匠とは類似しない。

2  B(C)意匠とロ(ハ)号意匠との各対比

(一)  各両意匠は、平坦部、桟部及び隆起部により形成されている点、桟部の左(右)端に袖部がある点、袖部の前端に覆板がある点すなわち、基礎的形状及び付加的形状の各構成において共通しているが、次の点において顕著に相違し

ている。

すなわち、B(C)意匠では平坦部の表面裏面とも二個の釘孔のほかに模様がない(この点がB(C)意匠の要部である。)のに対し、ロ(ハ)号意匠では平坦部表面に三本の縦筋条の隆起線と一本の横筋条の隆起線があり、裏面に四個の浅く刻設された矩形と隆起した引掛桟と凹溝とがあつて、表面裏面ともそれらが顕著な模様性をなしている(この点がロ(ハ)号意匠の要部である。)。

(二)  右共通点は、B(C)意匠の要部に関しない部分であるのに対し、右相違点は各両意匠の最も顕著な差異であつて全体として生じる美感を異にし、看者に別異の印象を与えるものと認められる。したがつて、B(C)意匠とロ(ハ)号意匠はいずれも類似しない。

六利用関係

次に、本件登録意匠と被告製品の意匠との利用関係について検討する。

1  A意匠

(一)  原告は、軒かわらにつき先願登録のA意匠は形状だけの意匠であつて、後願登録のイ号意匠は、A意匠の形状の余白部分に模様を付加したものにすぎないから、A意匠とイ号意匠は利用関係(意匠法第二六条)にある旨主張する。

(二)  ところで、後願の登録意匠を実施すれば、先願の登録意匠またはこれに類似する意匠の全部を実施することになり、他面先願の登録意匠またはこれに類似する意匠を実施しても後願の登録意匠の一部を実施することにしかならない場合、後願の登録意匠は先願の登録意匠またはこれに類似する意匠を利用する関係にあるものと解するのが相当である。

これに対し、後願の登録意匠を実施すれば先願の登録意匠の一部の実施にしかならない場合、すなわち、後願の登録意匠が先願の登録意匠またはこれに類似する意匠の構成要素の一部を自己の構成要素としているにすぎず、その他の構成要素を変更している場合には、両意匠間に利用関係は成立しないものと解される。

したがつて、後願の登録意匠中に先願の登録意匠の要部を含んでいない場合には、先願の登録意匠の一部の実施にしかならないので、両意匠間に利用関係は成立しないことは明らかである。

(三)  これを本件についてみるに、前記のとおりA意匠とイ号意匠とは基礎的形状及び付加的形状においては類似しているものの、A意匠は無模様を要部とする意匠であり、他方イ号意匠は模様を要部とする意匠であるから、イ号意匠はA意匠の要部を含んでいるものとは認めがたく、したがつてイ号意匠とA意匠間に利用関係は成立しない。

2  B意匠及びC意匠

(一)  また、原告は、袖がわらにつき先行登録意匠のB意匠及びC意匠と後発の登録されていないロ号意匠及びハ号意匠間にも利用関係が成立すると主張する。

(二)  思うに、一般的には、先行登録意匠と後発未登録意匠(利用意匠)間にも、両意匠が同一又は類似の関係にない場合には、権利間の調整規定である意匠法第二六条の利用関係の理論を類推適用すべきであると解するが、これを本件についてみるに、前記A意匠の場合と同様に、ロ号意匠はB意匠の、ハ号意匠はC意匠の各要部を含んでいるものとは認めがたく、したがつて、ロ号意匠とB意匠、ハ号意匠とC意匠間にいずれも利用関係は成立しない。

3  原告の主張に沿う甲第一五号証(松尾鑑定書)及び証人松尾憲一郎の証言、甲第二九号証の一(入山鑑定書)及び第四〇号証(入山実の証人調書)は、いずれも本件登録意匠の要部が形状であることを前提として利用関係を論じるものであるから失当であり、採用することができない。

七以上の認定によれば、被告三龍商会が製造・販売する被告製品の意匠と本件登録意匠は、類似関係にも利用関係にもないことが明らかであるから、被告三龍機工が製造・販売する被告製品製造のための金型が本件意匠権を侵害している旨の原告の主張は、理由がない。

八結論

以上のとおりであるから、原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官三村健治 裁判官村岡泰行 裁判官増田耕兒は、転補のため署名押印できない。裁判長裁判官三村健治)

別紙一覧表

別紙(一) 意匠公報(軒かわら、A意匠)

同 (二) 同右(左袖かわら、B意匠)

同 (三) 同右(右袖かわら、C意匠)

同 (四) イ号図面(軒かわら、イ号意匠)

同 (五) ロ号図面(左袖かわら、ロ号意匠)

同 (六) ハ号図面(右袖かわら、ハ号意匠)

同 (七) 実用新案公報(坂本格次郎)〈省略〉

同 (八) 意匠登録一覧表〈省略〉

同 (九) 小巴比較図〈省略〉

同 (一〇) 覆板比較図(左袖かわら)〈省略〉

同 (一一) 同右(右袖かわら)〈省略〉

同 (一二) 販売利益表〈省略〉

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